旅日記,随想,俳句など…

エジプト紀行5

(6)12月27日(木)

 朝食後の午前中はN君も私も学会発表の準備に当てることにした.一応の準備が完了したので,家内と最上階にある小さなプールを見物し,その傍にあるパブに入った.アルコール飲料はもちろんない.窓近くのテーブルに座ってコーヒーを注文した.出て来たのはコーヒーの粉も一緒に入ったトルココ−ヒーである.初めに飲むと粉っぽい,しばらくして飲むと上澄みが澄んできて飲みやすい.また,残量が半分をきると粉っぽさが強くなり,最後にはほぼ粉だけが1/3程度残ってしまった.その1/3をそのまま残して来たが,はたして正しいエジプト風のコーヒーの飲み方はどうするのだろうか.我々の方法が正しいのか,1/3を飲み干してしまうのが正しいのか,はたまた初めから均一にして飲むのが正しいのか.これが研究課題として残った.コーヒー2杯で7.50 £Eであったので,バクシーシを含めて9 £Eを支払った.

 12時頃にN君も誘って昼食を兼ねた散歩に出かけた.エジプトにはコシャリという特有の軽食がある.材料はコメ,マカロニ,スパゲッティ,レンズ豆,ヒヨコ豆などでその配合割合は地域や店によって差が大きいとのことである.本日の課題は,このコシャリを味わう事とした.ホテルをほぼ真東に行くとナイル川にぶつかる.川に掛かる橋を渡ると中洲となる.その橋の上から撮った写真が写真19である.ここまでは25日にホテルへ帰った経路の逆順になっている.
pic19
写真19.ナイル川に浮かぶ河上の家

 中洲に入ると表通り・裏通りとも食べもの屋も沢山あり,人が群がっている店もあるが目的はコシャリであり変に妥協するわけにはいかない.そのコシャリ屋が見つからない.中洲の東端に近いところで酒屋を見つけた.帰りにビールを買って帰ろう.中洲を出てさらに東へ行くと大規模な衣類のスーク(市場)があった.スークの中にも食べもの屋はあるが,どうもコシャリ屋らしいのが見つからない.アエーシ(エジプトパン)に色んな具を入れて食べさせる店は多い.何を食べさせるのか分からないような店もある.怖くては入れない.スーク内をぐるぐる廻り,結局中洲まで戻る事にした.中洲に戻ったところで例の酒屋に入り500 mlの缶ビールを5缶仕入れた.5.5 £E(110円)/缶で日本の値段から言うと半分弱であるが,やはりアルコール飲料は割高である.アルコール飲料以外では,例えば,市内バスは25ピアストル(5円),地下鉄は何処まで乗っても1 £E(20円)である.

 結局,疲れ果てて表通りにあるチキンローストを美味しそうに焼いていた食べ物屋に入ることにした.ここの人たちには英語もいっさい通じないことが分かった.仕方がないので「コシャリ,コシャリ,...」と呪文のように唱えながら注文をした.もう2時はとっくに過ぎている.お腹の準備も整っている.何が出て来るのか楽しみである.出て来たのはコシャリではなく,まるまる一羽のチキンとアエーシ,野菜である.チキンはきれいに半分にカットしてある.半分をN君に食べて貰うことにして,もう半分を家内と私で食することにした.アエーシを4半分にして中にチキンをむしって入れさらに野菜を加えて食べる.水で満杯の水差しとコップも出て来た.これは間違いなく生水であり飲むわけにはいかない.また,何故かコップがひとテーブルに1個しか来ない.これは正しいエジプト風である.他の店でも経験した.その店のコップはかなり汚れていた.飲める水がないのでアエーシに挟んだチキンと野菜を自分の唾液の力により噛み砕いて飲み込まなければならない.3名とも修行僧のような寡黙さと忍耐強さでアエーシとチキンと野菜に取り組んだ.しかし,我々のチキンはかなり頑張って半分以上は食したがまだかなり残っている.N君のも半分程度は残っている.3名とも満腹になりもうこれ以上食べられない.

 一体いくら掛かるものか見当がつかないので,100 £E札を出して勘定をお願いした.店のおじさんは久しぶりに100 £E札にお目にかかったというような身振りをして奥に行ってから,おつりを持て来てくれたが75 £Eも帰ってきた.全部で25 £E(500円)ということである.バクシーシとして3 £Eを渡した.それにしてもドリンクなしで3名ともよくあのチキンとアエーシを飲み込んだものだ.吾が事ながら3名ともアッパレである.この日の夕食はパスしてビールだけで済ませた.

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