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風船と放射性微粒子2

三好永作,伊藤久徳著の「風船と放射性微粒子」という論文が日本科学者会議の会誌『日本の科学者』2014年2月号に掲載されました.この論文は,風船プロジェクトで飛ばされる風船と原発事故によって放出される特定の放射性微粒子の違いと類似性を科学の目で論じたものです.両者には一定の類似性があり,風船プロジェクトにはそれなりの意義があると結論を出しています.興味のある方は,以下をクリックしてみてください.

論文「風船と放射性微粒子」

特定秘密保護法案を廃案に

「特定秘密保護法案を廃案に」


ほぼ1週間前に新聞に「特定秘密保護法案を廃案に」という趣旨の原稿を投稿した.新聞に載らなかったので,ここにその文章を置いておく.
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11月26日に特定秘密保護法案が衆議院を通過した.この衆議院での可決通過は,自民党の推薦者を含む7人の意見陳述者全員が反対あるいは慎重審議を要求した,福島における公聴会の翌日に,それらの意見に答える説明もなく行われた.このことは,大多数の国民の意見を顧みない安倍政権の政治姿勢を物語っている.
この法案では,すべての行政機関に恣意的な秘密指定の権限が付与される可能性が極めて高い.さまざまな許認可の権限を有する行政機関は,職権濫用や贈収賄などの汚職の温床となりうる.それが押さえられているのは,国民監視の目があるからである.特定秘密保護法はその目隠しの役割をもつ.なので法案成立は,あらゆる行政機関に秘密が氾濫しモラルハザードを起こす契機となる.民主主義社会とほど遠い社会の出現だ.
さらにこの法案は,11月27日に成立した日本版NSC創設法や集団的自衛権に対するこれまでの憲法解釈の変更などと軌を一にして,日本を普通に戦争の出来る国にしようとする動きの重要な構成要素である.法案成立で,戦争に関わる情報は特定秘密とされ国民から隠され,秘密のままにいつの間にか戦争に突き進むことになる可能性が一段と高くなる.これは,憲法九条をもつ日本の取るべき道ではない.この法案を廃案する以外に日本の明るい未来はない.

憲法13条を知らなかった安倍首相

憲法13条を知らなかった安倍首相

2013.5.16

去る3月末の参議院予算委員会において,民主党の小西洋之議員の質問「安倍総理,芦部信喜さんという憲法学者ご存じですか」に安倍首相は「私は存じ上げておりません」,「私は憲法学の権威でもございませんし,学生だったこともございませんので,存じ上げておりません」と答弁したという.

芦部信喜(1923〜1999)は戦後の憲法学会をリードした憲法学者である.1993年に『憲法』という本を出版した.この本は第五版まで版を重ねて,いまでは憲法についての基本となる教科書である.いま法学部にいる学生が芦部信喜を知らないと言えば,その学生はまったく勉強をしていない学生であるといって間違いない.数学では高木貞治を知らない,物理学ではファインマンを知らない,化学ではアトキンスを知らないことに対応する.この首相答弁に対して首相の不支持・支持の両派から失笑と落胆の声がネット上で相次いでいる.

しかし,安倍晋三君が学生であった1970年代には,この憲法についてのスタンダードな教科書は出版されていなかったのであるから,上の答弁で安倍首相がまったく勉強をしていない学生であったと断定することは無理があるかも知れない.ただ,当時芦部信喜氏は憲法学会をリードし,幾つかの著作も著していたのであるから,法学部の熱心な学生であれば,その名前くらいは知っていておかしくない.安倍晋三君は,少なくとも熱心な学生ではなかったとはいえるかも知れない.またその後,憲法についての勉強をほとんどしていないと断定しても問題なさそうである.

しかし,私たちが問題にすべきことは,個人の尊重や人権の保障を包括的に定めている条文は何かという質問に答えられなかったことである.現行憲法第13条は,「すべて国民は,個人として尊重される.生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする」として,「公共の福祉に反しない限り」,最大限の人権保障を謳っている.また,この「公共の福祉」は「国益」や「公益」といった抽象的なものや,また「多数のために個人が犠牲になること」を意味するのではなく,すべての人の人権がバランスよく保障されるように,人権と人権の衝突を調整することと解釈されている(注1).第13条は,第9条とともに現行憲法で最重要な条文であることは論を待たない.

昨年4月に作られた自民党の改憲案では,この第13条を「公益および公の秩序に反しない限り」という文言に変えることにより,「公益」や「国益」に反すると時の権力(政府)が判断すれば,人権を制限することができるようにしている.自民党にとっても,この第13条の改憲は重要なポイントであるはずである.この重要な条文である第13条の内容を知らない自民党総裁・安倍首相が,いま改憲に踏み出そうとしている.

聞くところによると,改憲案を作った自民党議員の中には「立憲主義」という言葉も知らない人が多いという.憲法の基本理念についてこんな無知である国会議員や首相に憲法を変える動きを自由にさせてはならない.(2013.5.16/ E.M.)

(注1)「中高生のための憲法教室」 第9回 「公共の福祉」ってなんだろう?
http://www.jicl.jp/chuukou/backnumber/09.html参照

風船と放射性微粒子

風船と放射性微粒子

2013.4.18

 「原発なくそう!九州玄海訴訟」の原告団が「風船プロジェクト」を立ち上げ,玄海原発の近くから放射性微粒子にみたてた風船を飛ばし,風船発見者からの発見時間および場所の報告を受けている.風船は放射性微粒子にみたてられているが,それらの飛び方は必ずしも同じではない.しかし,共通点もあるであろう.そのような点を考えてみた.

 ヘリウムを入れた風船と原発事故時の放射性プルーム(放射性微粒子)の飛び方が同一でないことは自明である.しかし,共通する部分もあると思う.まず,第一に,ヘリウム風船も原発事故時の放射性微粒子も発生時に上空にあがる.到達高度に幅があるのも風船,放射性微粒子とも共通である.

 風船プロジェクト第1弾(2012.12.8)で5番目にあった報告は,340kmの地点(高知県鴨部)での2時間30分後の発見であった.発見された風船の平均水平速度は39m/s(メートル/秒)となる.当時の地上の平均風速が4m/sであったことから,かなり上空を飛んだのもと考えられる.高度8km~13kmにジェット気流が流れているが,その風速は冬場では50m/sにも達するという.その影響を受けて早く運ばれたものと考えられる.少なくともジェット気流の影響を強く受ける高度を通過したのであろう.また,最初の発見は,2時間20分後に西区周船寺であった.周船寺は39km地点になるので,この風船の平均水平速度は4.6m/sとなる.したがって,この風船はそれほど高い上空まで上がらず,比較的低空を飛んだものと考えられる.第2弾で使った風船の素材は丈夫で伸びにくい材質のようであるので,5番目に報告された風船のように膨らみ続けてジェット気流の影響を強く受けるほど高く上がるものはないのかも知れない.

 原発事故時の放射性微粒子の高度分布は,爆発の形態や規模によりさまざまであるが,例えば,3月14日の福島第一原発3号機の爆発による放射性プルームの放射能のピークは1kmから2kmであったという.これは1km以下の低空にも2km以上の上空にも放射性微粒子がそれなりに分布していたことを意味している.

 いったん上空まで上がれば,その後は,風下の方へ空気とともに流れていくことになる.水平方向には,風速が大きいときにはほとんどが風下へ流れていく.この点も共通でと考えられる.無風のときには,熱拡散により同心円状に広がっていくが,1年を通じてそのような状態はあまりないように思われる.もちろん,風の向きと90°の(水平な)方向へは熱拡散により広がることになるが,この熱拡散の仕方の違いは,風が強いときにはそれほど大きくはないと考えられる.

 問題は,垂直方向の落下速度である.風船の落下速度は風船からヘリウムガスの脱け出る速度が関係する.この速度が風船ごとに異なることが,近くに落ちるか遠くまで飛んでいくかの1つの要因となる.もう一つの要因は,個々の風船の到達高度とそれにともない破裂するかどうかである.風船が落下する要因は,ヘリウムが脱けるだけでなく,風船の破裂がある.ガスの脱け方や風船の破裂し易さに違いがあれば,風船の飛び方に違いが出てくるかも知れない.第1弾と第2弾で異なる風船を使っているようなので,注意深い分析が必要かも知れない.

 放射性微粒子について垂直方向の落下速度について考えてみる.放射性微粒子が受ける垂直方向の力は,万有引力と空気の抵抗である.速度が大きくない場合にはこの抵抗は微粒子の速度に比例します.微粒子を球(半径:
r)として,その運動方程式は
   ma = mg - kv              (1)
で表されます.
mは微粒子の質量,a, v は微粒子の加速度と速度,g は重力加速度(9.8m/s),k は空気の粘性係数を n=0.000018Ns/m^2)として
   
k = 6πnr
で表現される.微粒子は一定時間後には一定の速度に達する.その速度を終端速度と呼ぶ.その速度は(1)式から
   
v = mg/k                (2)
と与えられる.質量
mは半径をメートル単位で測り比重をdとすれば,
   
m = (4π/3) r^3 x 1000d (kg)
で表現される.微粒子の半径を1ミクロン,比重を1として終端速度を計算すれば,
   
v = 0.00012 m/s             (3)
となる.つまり,半径1ミクロン(直径2ミクロン)の放射性微粒子は10000秒(3時間弱)に1.2mしか落下しないことになる.1km上空に吹き上げられた放射性微粒子が地上に落ちてくるには, 8,300,000秒かかることになる.これは約100日である.比重を3としても,1ヵ月は地上に降りてこないということである.数km(数千メートル)まで上空に吹き上げられた放射性微粒子は,地球をぐるぐる回ることになる.x

 しかし,粒径が異なれば落下速度は,その2乗に比例して大きくなる.例えば,砂丘の砂粒の粒径(直径)はほぼ0.35mmであるが,その砂粒(比重:2)は(2)式から1秒間に約8m落下する程度の終端速度になる.これでは砂丘の砂粒はあまり遠くまで飛べないことになる.水素爆発や水蒸気爆発などで発生した,この粒径以上の放射性微粒子のほとんどは原発からそれほど離れていない領域に落下することになる.それに対して,黄砂に含まれる砂粒の粒径はほぼ0.004mm(4ミクロン)であり,上で考えた放射性微粒子の2倍の粒径になっている.したがって,その終端速度は砂の比重も加味して考えれば(3)式の8倍,約0.001m/sとなり,高度1kmまで巻き上げられた黄砂が地上に落ちるまでには10数日はかかることになり,中国で巻き上げられた黄砂が日本にまで届くのは道理でということになる.

 このように,風船と放射性微粒子とでは垂直方向の運動はかなり異なったものになると考えられる.しかし,水平方向の運動はあまり違わないであろうということは間違いないことのように思われる.このことは重要でである.放射性微粒子は乾いた空気中のみを移動するだけではない.雨雲に遭遇することもある.雨雲に捕まった放射性微粒子は,雨とともに急激に地上に降ってくることになる.したがって,ところどころに落ちてきた風船は,このように雨雲に捕まった放射性微粒子に対応していると言ってもよいように思われる.水平方向の運動はあまり違わないであろうと考えられるからである.

ランニング考(1)

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ランニング考(1)

20年以上のブランクを経て,約1年前からランニングを再開した.退職して比較的時間的に余裕が出来たことが1つのきっかけである.もう一つの契機は,20数年前にフルマラソン完走の感動をもう一度味わいたいと気持ちが高じたことにある.
今年の指宿菜の花マラソン大会(1月13日開催)を目指して,昨年10月から3ヵ月プランでランニングを強化していった.10月の走行距離は60キロ程度であったが,11月の走行距離は170キロと順調に伸びていった.調子に乗りすぎて,走りすぎたことで12月上旬から膝痛で走れなくなった.1ヵ月の走行ブランクで出場した菜の花マラソンでは,強風・氷雨・膝痛の3重苦で30キロ付近においてリタイアしてしまった.そのまま我慢して走り続けていれば足を痛めていたかも知れない.リタイアは正解であったように思う.
新年早々,フルマラソンを走る予定であると今年の年賀状に書いたら,大先輩からマラソンは体に悪いからお止めなさいと忠告を受けた.私の体を心配しての忠告であり大変有り難いことである.確かに今回経験したように,体力の限界を超えてランニングを続ければ,膝を痛めたり,体を壊すことになる.しかし,自身の体力の範囲の中でランニングを楽しむことは出来る.いまの私は,その範囲でランニングを続けることを考えている.
筋力を含む体力は,トレーニングで向上するものである.20数年前には,1キロ,2キロのスロージョギングから始めて1年以上かけてフルマラソンを完走する体力・筋力を付けていったように記憶している.タイムは4時間10数分であった.1キロ6分のペースで42.195キロを走りきったことになる.還暦を過ぎたいまの体力ではこの記録を出すのは無理であろうが,5時間を切るタイム(1キロ7分程度のペース)で完走をしたいものである.
ランニングを再開した1年前には4キロや5キロを走るのがやっとで,ランニング後には全身に強い疲労感が残ったものである.今では,10キロ程度を走った後でもそのような疲労感は感じないようになった.iPS細胞の山中教授は,20キロを走った直後にテレビのインタビューを受けて疲労感も見せず応答していた.早くその程度の体力・筋力を付けたいものである.
ランニングの効用の1つは,明らかに体力が付いたと実感できることである.以前はひと冬に1,2回はカゼをこじらせていたが,この冬はカゼの予感も一切なかった.もう一つの効用は,ウェイトコントロールである.体重は,20代のベストな体重に近づいている.お陰で,久しい前から入らなかった,30代に使っていたズボンがはけるようになった.胴回りが10センチ以上細くなった結果である.また,食事が美味しくいただけることは,ランニングの最大の効用かも知れない.来年1月の菜の花マラソンに向けて,筋力・体力を付けながらランニングを楽しんでいる.
2013.3.22

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